![]() | ラットマン 道尾秀介 光文社 2008-01-22 by G-Tools |
「見る」とか「聞く」とかいう行為はさ、文脈効果によってかなりの影響を受けるんだ。文脈効果ってのは、人間が何かを知覚をする過程で、前後の刺激が知覚の結果を変化させてしまう現象を言う。
上に引用したものは、作中でバンドメンバーの竹内が語るセリフなのだが、ミステリの構造そのものだなぁって思った。「思い込み」を破壊される時に、僕は快感を覚えるわけ。見えてた世界が一変するその瞬間が…。めっちゃ、好きやねん!
「文化祭の吹奏楽部の演奏見てた? 3年の先輩の人たち最後だからって、泣いてたよね…ソルトくんは感動とかしないの?」
おそらく、この質問をしたのは、新任の女の先生でした。勉強についてひとしきり話した後、雑談的雰囲気で切り出されたと記憶してます。何故そんな質問を受けるのか、全く理解できず口ごもってしまい、私は
「いや、特に…」とつぶやきました。
今でも「?」な問いです。まぁ、あまり感情を表に出すタイプではなかったので心配してくれてたのかなぁ、と考えられますけどね。実際の性格は結構ベタベタな展開でも、号泣できる準備は整っているわけです(笑)。つまり、見抜かれてなかったようで、うれしいやら、悲しいやら…。
というわけで、野村美月「“文学少女”と死にたがりの道化」でございます。
![]() | “文学少女”と死にたがりの道化 野村美月 エンターブレイン 2006-04-28 by G-Tools |
[あらすじ]
「どうかあたしの恋を叶えてください!」何故か文芸部に持ち込まれた依頼。それは、単なる恋文の代筆のはずだったが…。物語を食べちゃうくらい深く愛している”文学少女”天野遠子と、平穏と平凡を愛する、今はただの男子高校生、井上心葉。ふたりの前に紡ぎ出されたのは、人間の心が分からない、孤独な”お化け”の嘆きと絶望の物語だった---!
弓道部の片岡愁二先輩を好きになった竹田さんが、文芸部に恋文を書いてくれと頼みにきたことからストーリーは始まります。一生懸命照れくさい恋文を代筆する心葉くんでしたが、ある時弓道部に片岡先輩はいないということ、そして当の先輩は既に自殺してこの世にいないことがわかり困惑します。ここら辺りから、だんだんミステリ色を帯びてきますね。
そして、片岡先輩が書いたと思われる太宰治の「人間失格」をモチーフとした手記を読み、先輩の自殺の秘密を握っている「S」という人物は誰か? という展開に物語はますますミステリ色を帯びてきます。
この物語は文芸部の2人が主人公となっています。本当に物語を食べる”文学少女”の天野遠子先輩と伝説の美少女ベストセラー仮面作家の井上心葉(このは)。
本当に物語を食べるとは、本を読みながらページを破り、ムシャムシャと食べるからです。そして、ソムリエのような味の感想を述べていく不思議ちゃん。この人だけ異次元な設定。
妖怪のような遠子先輩ですが、雨の中傘もささず帰ってびしょ濡れになると、次の日風邪をひくなど、至って本を食べること以外は普通の女の人です。感動するのは、彼女がラストで、とある人の自殺を止めるシーン。死なせない理由を何個も何個も羅列していくんです。もちろん文学作品になぞらえて…。
「あなたが考慮すべき容疑者達は、藤田カツ、三浦源治、串田辰夫、串田浩子 ---の以上4人だけ…」
なおかつ物語が進むに従って、容疑者も減っていくという。なかなか挑戦的ではありませんか!
そして、作者が宣言した通り、一人死に、二人死に…と容疑者がますます限定されていきます。それなら簡単に犯人が推理ができるじゃん! と安易に考えてたら、痛い目にあう。それが我孫子武丸「Oの殺人」です。
![]() | 0の殺人 我孫子武丸 講談社 1989-08 by G-Tools |
ご存知(?)速水三兄妹シリーズの第2弾。またまた警部補のお兄さんのために、一肌脱ぐことになる慎二といちお。ユーモアミステリと銘打っているだけあって、終始ドタバタとベタな展開が繰り広げられ、サクサク読み進めることができます。でも、笑えるかどうか正直微妙。
しかしながら、この小説のメイントリックこそ、ユーモアが溢れているような気がします。最後のページまで読めば、おかしくも悲しい、人間群像劇(?)だったのだと気づかされました。なーんて☆
歌野晶午「密室殺人ゲーム王手飛車取り」を読みました。
やっていることは、エゲツナイがスラスラ読めて楽しい。犯罪動機のドロドロした部分が全くないからですかね? でも、一度ほったらかしにすると、いつまでもほうっておける。結局読み終えるまでにかなりの時間を要しました。
歌野さんは「最初のアイディアは1988年ごろ芽生えました」と語られてます。「アイディア」が「芽生える」とは何ともカッコイイ表現ですね。
![]() | 密室殺人ゲーム王手飛車取り 歌野晶午 講談社 2007-01-12 by G-Tools |
[あらすじ] <頭狂人><044APD>
それぞれが出題する問題が1つの短編になっていて、計5編ある。つまり、5人が全員問題を作成したということ。一番おもしろかったのは、「求道者の密室」かな? 私はここで、コロンボ氏は八田清美じゃないかと推理したのだが、間違っていた。間違っていたけど、私の答えが正解でもいいと勝手に納得。と、思っていたら、次の短編で…。
やっぱり、ハンドルネームを使っているわけだから、読者の興味は当然、最後に明かされるだろう正体。まぁ、ラストでわかるようになってます。しかし、王手飛車取りの意味はわかりません。
これは、簡単。答えは電話だ! もちろん私は「ベートーベンの時代に電話なかった。だからコレがおかしい」と自信満々に答える。答えはもちろん合っていた。が、理由は間違っていた…。
ところで、話は乙一の「暗いところで待ち合わせ」である。
![]() | 暗いところで待ち合わせ 乙一 幻冬舎 2002-04 by G-Tools |
[あらすじ]
視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。職場の人間関係に悩むアキヒロ。駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい2人を引き合わせた。犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。奇妙な同棲生活が始まった…。(表紙裏)
目が不自由な人が一人暮らしをしている場合、夜になると電気を付けるのか? この長年の疑問に答えてくれている。結論を言うと、付けるようですね。理由にも納得しました。これは、余談。
いない存在として息を潜めるアキヒロと、いるのに気づきながらも気づかないフリをし続けるミチル。部屋で彼と彼女に交わされる言葉は一切ない。一言でいうと、「静謐さ」が満ち溢れている長編ミステリ。奇妙な設定の中で、ゆっくりと心が通っていく過程が素晴らしかった。特にファーストコンタクトのシーン…ミチルがシチューを作り、席につき待っていると、アキヒロが近づいてきて座り、一緒に食べる箇所はまたしても涙が…。また、ミチルの家を訪れた理由もダブルでドンデン返しがあり驚かされます。
生きていくことの意志みたいなものも久しぶりに感じたし、言うことないです。できたら、映画も観てみたいかも。衣擦れとモノが軋む音ばかりの映画だったらなおよし。
とにかく、巷では乙一最高傑作と名高いこの作品。私もそう思う。実におもしろく、感動しました。オススメの1冊です。
最後にベートベンの部屋に電話があるのが不自然な理由。「ベートーベンは耳が聞こえないから」
[メモ]
視力をなくした女の家に警察に追われる聴力をなくした男が忍びこんだら、果たしてどうなるだろう?
「弾丸! コンデンスミルク」という「めちゃイケ」を思わせる架空の番組がある。そのバラエティ番組の1コーナーに「ぱくぱくゲーム」と呼ばれる「しりとり侍」を思わせる人気コーナーがある。小学生のショウタと友達はそれに夢中だ。しかし、ルールが皆目わからない。(以下、本文引用)
今夜の「ぱくぱくゲーム」にはひと波乱あった! 優等生のケンタが2回連続でアウトになったのだ!「サ・ン・マ・ノ・シ・オ・ヤ・キ」ときて、もう続けられないから、カズがアウトかと思いきや、カズは「ぱく、ぱく、ぱく(手拍子)、テ」といった。次のケンタはうろたえてアウト。「サンマノシオヤキテってなんだ!」と強く抗議したら、カズは冷静沈着に「サンマノシオヤキテイショクだよ」と返答した。「そんなのありか?」とケンタは泣きを入れたけど、天の声はOKのチャイムをかろやかに鳴らす。
一体どういうゲームなんだ?
![]() | 子どもの王様 殊能将之 講談社 2003-07-30 by G-Tools |
[あらすじ]
子どもの国を支配している王様なんだ。トモヤは、ショウタにそう話した。
子どもの王様は子どもを捕まえて、召使いにする。言うことを聞かないと、平手打ち、頭蹴り、タバコを腕に押し付けるといった、お仕置きが待っている。のだと言う。しかし、王様の風貌はショウタが考える王様のイメージとは、かけ離れたものだった。王様は茶髪の長髪に無精ひげをはやし、いつもよれよれのトレーナーとジーンズ姿らしい。団地の外側からやってきて、いつか連れ去られてしまうとビクビクしている始末。ショウタは作り話のうまいトモヤなので、おもしろくはあるが、信じたことは一度もなかった。しかし、団地内で、ショウタも「子どもの王様」の姿を目にし、状況は一変する…。
もうひとつショウタ達を夢中にさせるものは「神聖騎士パルジファル」だ。最終回に近づくこの番組で、グリーングレールが裏切って、邪悪なクリングゾールの手先になり、グレールナイトが全員捕まってしまう。しかし、パルジファルが倒してくれると信じるが、グリーングレールはグレールパワーを持っているので、パジルファルも勝てるかどうかわからない。グリーングレールが裏切った理由については、様々な憶測が飛び交っている。なかなかにややこしい展開。果たして世界はどうなる?!
「ぱくぱくゲーム」のルールは途中で判明する。1度くらいはやりたいな、と思った。「神聖騎士パルジファル」は残すところ後、1回でこの小説が終了する。パルジファルは、グリーングレールに全力で戦うことができず、ピンチに陥っているみたいだ。
ところで、肝心の「子どもの王様」は、あっさり正体が誰なのかは想像できた。大人の私には、一番わかりやすい話。
ですが、背表紙が魅力的だったので、図書館で思わず手にとってしまった北村薫「ニッポン硬貨の謎」。
※1 「熱心な読者ではない」…一度は使ってみたい表現ですよね。
![]() | ニッポン硬貨の謎 北村薫 東京創元社 2005-06-30 by G-Tools |
この本はエラリイ・クイーンが実際に作家兼探偵として活躍し、来日した際起こった連続殺人事件を描いた未発表原稿「ザ・ジャパニーズ・ニッケル・ミステリ」を北村薫が翻訳した体裁となっています。また、注釈も凝りに凝って、遊び心溢れるパスティーシュ作品です。
そして、クイーンが出くわす連続殺人事件が、その昔、若竹七海がバイト先の本屋で遭遇した不思議な出来事「五十円玉二十枚の謎」(※2)の解答となっていることも見逃せません。
国名シリーズを読んだ方ならすごく楽しめるんだろうなぁと、多少後悔しつつ読み進めました。作中に「クイーン論」も出てきて、ますます後悔。「シャム双子の謎」のネタバレも出てきた段階では読むのを止めようかと思ったほど。
いつもの私なら「未読の方はご注意ください」の文字に反応し、そっと本を閉じる性格なんですが、今回は「ええままよ!」と読みきりました。結局、誰が犯人かわからなかったので、結果オーライです。
この作品の一番の読みどころは「クイーン論」でしょうか? 展開される「カキ=ヒョウグ(描表具)の技法」の件は唸りました。
日本の美術作品は、巻物となることがあります。その際、洋画でいうなら額縁に当たる、表装部分にまで絵を描くことです。絵の外の世界をも取り込み、作品の一部にしてしまう---これを、《描表具》といいます。ごく特殊な表現方法です
私がパッと思いつくのは、村上春樹「風の歌を聴け」のデレク・ハートフィールドでしょう。デレクの墓を訪れるあとがきまで、作品に取り込んでしまう形で描かれた小説。最初読んだときは実在の人物だと思いましたが、実は架空の人だったというオチ。他は、倉知淳の「星降り山荘の殺人」、森博嗣がシリーズのある時点で登場人物表を載せなくなった事などが思い浮かびます。作者の遊び心溢れる技法の一種と言えるでしょう。
とまあ、パスティーシュ、評論、本格ミステリ、五十円玉二十枚の謎の解答と贅沢な一冊です。
※2 「五十円玉二十枚の謎」…土曜日の度に50円玉20枚を1000円札に両替する男の話。何故男は50円玉20枚を両替するのか? の解答をミステリ作家、一般公募で募集し話題となったらしい。
![]() | 競作五十円玉二十枚の謎 若竹七海、依井貴裕、有栖川有栖他 東京創元社 2000-11 by G-Tools |
![]() | クローズド・ノート 雫井脩介 角川書店 2006-01-31 by G-Tools |
前の住民が置き忘れていったノートがクローゼットの中で発見。他人の日記を読むのは覗き見趣味で悪いなと手を出さなかったのですが、日記に挟み込まれていた小学生が書いたとおぼしき数枚のメッセージカードに興味を魅かれ読んでしまうことに。
そこには新任教師・伊吹先生の生活が綴られていて、4年2組の子供たちとの心温まるやりとり、不登校児に対しての悩みな。そして、大学時代に告白し、フラれた隆との再会と、近づきたいのになかなか関係が進展しないもどかしさなど。しかし、尻切れトンボのように最後は終業式の前日で終わっていた。ジ・エンドもないままに…。
物語は並行して、香恵の大学生活も描かれいる。文具屋でバイト、マンドリンの定期演奏会、そして文具屋の万年筆フェアの時に応対した客、イラストレーター石飛に対する恋ごごろ。日記が万年筆で書かれていたこと、教育大に通い、おぼろげながら教師になれたらいいなぁと夢を見る香恵は伊吹先生に共感し、憧れと親近感のないまぜになった感情にかかれ、伊吹先生に一目会いたくなった香恵は伊吹先生が務めていた小学校に足を運んだ。
そこで、驚愕の事実を知ることになるのですが、驚くというよりも、日記に登場していた不登校の少女に会ったところで、早くも目頭がジンジン。この先のヤバすぎる展開を想像すると怖ろしくなってしまいました。
隆が伊吹先生をフッた理由の「映画のクライマックスをいきなり見せられても困る」。私はあなたのことが好きなんですといった仕草を出してくれないと、といった告白前のフリ的なものと文具店の可奈子さんの「商売はお客様が共感できるストーリーをいかに提供できるか」の言葉には納得! の一言。
冒頭に日記の最終部分が書かれていますが、この物語の最終部分に再登場した時は重みの全く違う文章に変貌しています。
うらぶれた建物の一画に、射抜くような白い光が2つ。その先の絶え間なく動き続ける円周運動。
活動を止めた肉体のタイド。刻まれたソリッド。放物線を描くメソッド。緩慢なスピード。
「落ち着きなさい」「そう…ゆったりと」「まろやかに…」「とぷとぷと」「甘くあって欲しいか?」「ぷく、ぷく、ぷく」「液体になるのだ」
液体の沸点を遥かに越え、飛散する。かすかな音とともに消滅。
嫌な味。嫌だ。嫌だ。嫌だ。
どうして?腕が足りなかったのか?すっきりしない。間違いだったのか…。
何を間違えたのだろう?
![]() | 奥様はネットワーカ 森博嗣 メディアファクトリーダヴィンチ編集部 2002-07 by G-Tools |
【イントロダクション】
奥様はカレーでも作ってたのでしょうか?(それとも魔女?)
さあ、それでは内容をご紹介していきましょう。まずはクレタさん、どうぞ!
【クレタ】
何から話せば、いいのかしら?うーん。6人の登場人物がいるのね。それぞれが何やら秘密を抱えている。そして、視点が代わる代わる描かれ物語が進行していくの。大学関係者の連続殺人と連続殺人未遂事件が起こって、6人の誰が「容疑者X」なのかというのが、謎かな?こんなもので。
どうもありがとうございました。ザックリとした説明で全然わかりませんが、まあいいでしょう。さて、では次、マルタさん。はりきってどうぞ!
【マルタ】
はりきってって…はりきらなければならないのかい?じゃあ、僕は推理でもしてみようかな。この小説を一言で言えば血。「血」がテーマなんだ。そこから飛躍して血液が流れる血管を想像してみる。まさにネットワークそのものでしょ。その血を操るのがネットワーカという寸法なんだよ。でね、もうひとつ血を操るものがある。それは遥か彼方にあっても、海の満ちひきまで左右してしまう月の存在。作中でも触れられていたし。もちろんこの引力が人間に影響を及ぼさないハズはない。ここまで来たらわかる?それは…
あーストップ!ストップ!そこまでにしておいてください。とにかく強引な推理ありがとうございます。えーっと次、シュガーさん、お願いします。
【シュガー】
クレタがマルタにまろやかにとか言ってたの♪
……終わりでしょうか?次行きますよ?では、気を取り直してスイーツさん、お願いします。
【スイーツ】
殺人の、動機はいつも、甘いもの。こんにちは、加納スイーツです。今日ご紹介するのは「奥様はネットワーカ」(森博嗣)です。この商品は単行本で、221ページの分量があり、全て紙でできています。しかし、一般的な小説に見られるように文字だけが羅列されているのではなく、時折挿し込まれる幻想的なコジマケンのイラストが読者を飽きさせません。だが…
ポエティック部分が意味不明だー!
想像力が必要とされる詩は苦手なんです。というわけで、星…
ちょっと、待った!星は月末に発表というシステムなんで、それ以上はご勘弁を。では、最後にソルトさんにしめていただきたいと思います。では、どうぞ。
【ソルト】
おい!お前は一体誰だ?
![]() | ボトルネック 米澤穂信 新潮社 2006-08-30 by G-Tools |
[あらすじ]
恋人・ノゾミを弔うため東尋坊に来ていた僕・リョウは強い眩暈に襲われ、そのまま崖下へ落ちてしまった…はずだった。ところが、気づけば見慣れた金沢市内の公園のベンチの上。不可解な想いを胸に自宅へ戻ると、存在しない姉・サキに出迎えられる。どうやらここは「僕の産まれなかった世界」らしい。
ボトルネックといえば、渋滞の時によく聞く、車線が減少したり、合流地点なので起こる現象のこと。出口がひとつなのに大量の車が流れ込むとどうしても詰まってしまう。「ボトルネック」と「パラレルワールド」のキーワードで「そういうことね」と一人で勝手に結末を想像して納得顔をしていたわけだが、その余裕の笑みがだんだん引きつってくる。
【ボトルネック】
瓶の首は細くなっていて、水の流れを妨げる。
システム全体の効率を上げる場合の妨げとなる部分のことを、ボトルネックと呼ぶ。
全体の向上のためには、まずボトルネックを排除しなければならない。(p127)
なんだか穏やかじゃない。
サキと一緒に元の世界に戻る手ががりを探すことになったリョウ。しかし、リョウが産まれなかった世界にはいろいろ「間違い」があった。ドアの鍵。父と母の結婚記念の皿。安い食堂。などなど一人の人間が変わっているだけなので、極めて些細な違いだが、リョウはノゾミが生きていることを知り、驚く。
リョウの世界では、生きること厭っているかのような暗さだったノゾミが、サキの世界では天然キャラで底抜けに明るい。死んでいるはずの人間が生きているということは…。
「外から眺める世界は果てしなく単純である。しかし、そこに巻き込まれてあるとき、全ては無際限となり説明しようのないものになる」とはヴァレリーの言葉。
「推理小説を読むと、答えが簡単にわかるのに、実際の事件にでくわすと、どうしてもこうも思考が混乱するのかしら?」(こんなニュアンスだった)とは西之園萌絵の発言。
仕方がないとえば仕方がない。その残酷さに抵抗する術があるのかもしれないが、「ま、もう少しオトナになれば、お前もいい経験だったなと思えるはずさ」という高みにたった言葉とは違った方法で。現在進行形の生を語るの実に恥ずかしい。
















